「そういや、あんたって彼女いないの?」
「めんどい」
「ふーん、の割に童貞じゃないってことは、テキトーに遊んではいるってことか」
「わりぃかよ」
「別に。そんなん個人の自由じゃん」
ふうと吐きだした煙が、天井に昇ってゆく。
苦い筈の煙草の味が、曖昧に口の中に広がっていった。
横目に見た彼女は、どこか壁の向こうでも見ているかのような瞳を揺らして、煙草をふかしていた。
その仕草から普段から煙草を愛飲していることがわかる。
元々、どこか周りよりも大人びていて、浮いていた。
年相応にはしゃぐこともなく、誰かの恋愛話に混じることもない、ように思えた。
ただその真っ直ぐに伸びた白い脚を見る度。
こいつはきっと、男を知ってるんだろうと感じていた。



