「なんでさ、有坂と別れたんだ?」
お互い二本目の煙草を燻らしながらふと問う。
僅(わず)かに乱れた髪を手櫛で梳(す)きながら、彼女は口角を上げた。
「それさ、ヤった後に聞く?」
「別に俺はお前の彼氏じゃねぇし」
「じゃあ答えない、彼女じゃないし」
部室の片側に置かれた古びたベンチがぎしっと音を立てる。
視線を落とせば、彼女が脚を組みかえていた。
二週間前まで、こいつは親友の彼女だった。
親友は入学当時から密かに思い続け、三年目にして漸(ようや)く成就したというのに。
彼氏でいれたのは、たったの一週間。



