昼になっても気温が上がった気がしない今日。

相変わらず部室には隙間風が舞い込み、煙草の煙をかき消してゆく。


今朝有坂から聞いた言葉。

「また彼女と付き合うことになった」

それがどうしても頭から離れなくなって、煙草は既に床に五本散っていた。

少し照れるようにはにかんだ有坂の顔は、当に忘れたと言うのに。



小さくなった煙草を手から放す。

音を立てずに落ちたそれを踏みつぶした瞬間、溜め息を零す自分がいた。

「意味わかんねぇ」

そう、呟いた声は掠れている、だが。


「何が?」

その声は透き通っていた。

いつの間にか開いていたドアに、そこまで俺の耳は死んでたかと可笑しくなってくる。