愛憎コノテーション[短篇]

「吸いなよ、私いらないから」

そう言って自分のポケットからガムを取り出している。

それをさっと口に放り込んだのを見て、俺は部室に隠してあるライターを取り出した。


遠慮なく最後の一本に火をつける。



最初の煙を吐き出したときには、彼女は再びヘッドホンを耳にかけていた。

俺自身特に会話がしたいわけではない。

寧ろ無言でいいのはありがたいことだと、紫煙を吐き出す。



部室の汚れた天井に昇る煙を見て、ふとこいつは鍵の番号を誰から聞いたのかと考え出してしまった。

有力なのは同じ部活の有坂だが、あいつは部活のとき以外ここを利用しない。

ということはやはり別の誰かか、と思ったところで、卒業した先輩の顔を思い出した。