愛憎コノテーション[短篇]

「人のこと言えんのかよ」

「ま、お互いさまってね。私にも一本頂戴」

「自分で持ってこいよ」

「買ってまで吸わないから。たまーに欲しくなるだけ」


その割には昨日二本も吸ってただろ。

そう言いそうになった口は閉じて、煙草の箱を取り出した。


だけど、そこに入っていたのは一本だけ。



「ないの?」

「ないな、一本しか」

「何、私に別のモノ咥えろって?」

「アホか」


制服を着たまま煙草なんぞ買いに行ける筈がない。

思わず零れた溜め息に、目の前から笑い声が零れた。