愛憎コノテーション[短篇]

誰かいても部員がエロ本読んでるか寝てるかだろうと思っていたら。


中にいたのは昨日のあいつで。

ヘッドホンをかけて長い黒髪を揺らしていた。



またしても暫し逡巡する。

このまま去るのが吉か。

気にすることなく煙草を吸っていっても構わないか。


だがほぼドアを開けきった時点で、彼女の瞳は俺を捕まえていた。

白い指がヘッドホンにかけられ、なまめかしくずらされる。


「何、朝からサボり?」

そして聞こえる粘度のない声。


もうここまで来たら吸うだけ吸って行こうと決心して俺はドアを閉めた。