行き先は決まっていつもの部室。

本来閉めてある筈の鍵は、いつの頃からか別の物に変えられ番号さえ知っていれば誰でも開けられた。


だから時折先客がいて、ドア越しに聞こえる声に気づいては方向を変えて屋上へと向かっていた。



まださすがに誰もいないだろう。

そう思いながら鍵に手をかける。


しかし鍵は開いていた。


暫(しば)し、逡巡する。

ドアに手をかけずに中を伺うも、声や物音はしない。

ならば昨日誰かが閉め忘れただけか。


声がしないんなら、開けて誰かがいても問題はない。

そう考え付いた俺は、醜い音を立ててドアをスライドさせた。