「…サマナってさ」

「ああ」

「本当に怖いモノ知らず、だよね」

「はあ?」

オレは手を離し、コーヒーの缶に手を伸ばした。

「オレは偏見とかあんま無いだけ。くっだらない正義感とかないタイプなんだ」

「ふぅん。…でも身を守る術を持っていないのに、そういうふうに近付くのは危ないよ?」

「…それは言えてるかもな」

サラのように攻撃タイプじゃない。

もし力でねじ伏せることが好きなヤツがいたら、とりあえずは逃げよう。

足の速さには多少なりと自信があるし。

「まっ、気が向いたら友達になってくれ。オレはここに来て日が浅いし、まだ知らないことが多いから」

「…考えとく」

「ああ」

その後、特に会話もなく昼食は終わった。

コクヤはしかし、そのまま寮に戻ると言って、帰ってしまった。

「気分損ねたかな?」

でもちょっと分かったこともある。

偏見は全く無いとは言い切れない街なんだ。