逃げたい、と思う。

けれど負けたくない、とも思ってしまっていた。

「アハハ。サマナみたいなタイプのヤツもいたっけ? …でも今はいない。俺が喰らったから」

喰らう…コクヤにとって、『壊す』ことは『喰らう』ことなのか。

「…オレは別にコクヤにどうしたいとか、どうされたいとかはない」

「じゃあ何がしたい?」

「友達になりたい」

はっきり言うと、さっきよりも大きく眼を見開いた。

「オレは別に犯罪遺伝子を持っていようが、覚醒していようが興味無いよ。自分にとって害がなければ。だからそれ以外だったら、交流は欲しい」

「俺と友達、ねぇ…。生まれてはじめて言われたよ。そんな戯言」

そう言うコクヤの視線は、鋭い刃物のようにオレに突き刺さる。

「コクヤが言わせないだけだろう? 見えない壁、作ってない?」

「ああ、あるかも。煩わしい人付き合いは嫌いだから」

頷きながら、コーヒー牛乳を飲む。