ロビーにはソファーとテーブルのセットがいくつか置かれてあった。

壁際の席に座ると、三つ編みの女の子は紅茶の用意をするからと言って、食堂へ行った。

「あっ、自己紹介がまだだったわね。アタシはミツキ。黒髪のコはムツキ」

「よろしく」

オレは包み紙を剥がし、箱を開けた。

「うわぁ♪ 美味しそう~!」

「ミツキ、ヨダレヨダレ!」

「あら、いけない」

ハンカチで口元を抑えながら、ミツキはそれでも箱の中身を見ている。

箱にはさまざまな種類のクッキーが、所狭しと入っていた。

甘い匂いがロビーに広がる。

「でもスゴイわね、サマナくん。カミヤがこんなに作るなんて、珍しいことよ」

「あっ、うん。そうなんだ」

理由は言えない。…特に女の子相手には。

「まあ転校生は珍しいからね」

銀のトレーに紅茶のセットを載せて、ムツキが戻ってきた。

そして慣れた手付きで紅茶を淹れてくれる。