もし私がいなくなっても、友達がいないしクラスの子さえ悲しみはしないだろう。

私も、死ぬことに怖いという感情はなかった。



でも母だけは、悲しむことが頭に浮かんだ。

兄が家出をしたときに、間近で見た母の涙。

その時の母の本音を聞いた私は、これ以上悲しませたくないと思った。


兄がいない家で父が母に手を上げそうなとき、助けてあげられるのは私しかいない。

私の足は再びフェンスを登り、内側へ入った。



母のことは言い訳で、実は勇気がなかっただけかも知れない。