鞄を置き、胸あたりまであるフェンスをよじ登る。

反対側の、幅の細い地面へと足をつける。



今、私の体を支えているのは、フェンスの手すりを持っている左手1本のみ。

手すりを握ったまま、背中をフェンスの方向に向ける。


そのまま下を覗いた。


3階までしかないアパートの屋上から飛んでも、怪我だけかも知れない。

けれど、高所恐怖症の私には足がすくむ高さだった。

頭が上手く回らない私には、それさえも分からない感じだった。


もう1度、下を覗いてしばらく動かない私。



ふと思い浮かんだのは、遺書を書いていないということ。