「あぁ、分かったよ。そんなに言うんなら、今すぐに出て行ってやるよ!」

兄は持って帰ってきて部屋に置いていた鞄を、再び手にした。




父と母の隣を、無言で通り抜ける。

「和樹、待ちなさい!」

母が駆け寄るが、兄の足は止まらない。


部屋のドアのところで、私は兄と目が合った。

その時、一瞬だけ悲しそうな表情を見せた。

しかしすぐに下を向き、そのまま玄関へ向かい靴を履く。

母も玄関へやってきて、兄の右腕を掴み出て行こうとするのを制した。