あれから、妙に海翔という人が気になるようになった。


違うクラスで1日に3度くらい遠くから見かけるだけ。


でも、なんか海翔をみてると不思議な気持ちになった。


「葵葵!あの人海翔だったしょ?」


自信満々に凜が聞いてきた。


「うん。名札見た。中松って書いてた。」


「やっぱあ!あたし天才!」


凜が舞い上がる。


実はあの後友達と一緒に名札を見に行って、


確信を得た。


「ねえねえ、ぶっちゃけ!葵って海翔が好き?」


・・・話したコトもないのに好きなわけない。


答えは決まっているのに、


悩んでしまった。


なんで「スキじゃない」っていいにくいんだろう。


このときは、分からなかった。


「ねえ凜!そんなことよりー」


迷ったあたしは、話をそらした。


自分がわからなくなる。










話したコトもない人を、


好きになるってコトあるのだろうか。










水のみ場で手を洗っていた。


「葵!!」


紗樹にばったり会って、


抱き合って、


キャッキャキャッキャと騒いだ。


「葵葵ー!今日ね、好きな人と目が合ったの!」


「え?すごおい!」


「ドキドキしちゃった。もう!きゅんきゅん!」


恋する紗樹を見て、


「可愛いなあ」って思っていた。


こんな風にはしゃぎたい。


どんなに小さいコトでも喜べる恋がしたい。


そんな気持ちが強くなる。





「あ。」





あたしの目線の先には、


中松海翔。


友達と楽しそうに笑って、歩いている。


大きくて、目立つ。


・・・・・・・・・・・ドキッ・・・・・・・・


海翔をみて、ドキッとした。


こんな自分にビックリする。


なに?


この不思議な気持ち・・・・・。


自分の気持ちが見つからなかった。