「葵ちゃーん!ちょっといいかな?」


甘いボイスに誘われて、あたしは駆け寄った。


玲未さんに。


「ナンですか?」


「玲未ね・・・葵ちゃんには悪いんだけど・・・。」


急に出し惜しみをする玲未さん。


あたしは余計に知りたくなる。


「ナンですか?ナンですか?」


「付き合ってるの。海翔と。」


急にあたしの前が真っ暗になる。


しばらくして、小さな光から玲未さんを見た。


嬉しそうな声で、悲しさを作っているように見えた。


それに腹が立つ。


「そうですか。さようなら。」


もう見てられなくて、あたしは走った。


全力で走りまくった。


2度目の失恋。


海翔は玲未さんがスキだったんだ。


やっぱり・・・そうだったんだ。


怒りと涙で顔がぐちゃぐちゃになる。


あたしが・・・玲未さんの立場になるはずだった。


玲未さんにうらやましがられたかった。


玲未さんに腹立たせたかった。


玲未さんになりたいよ・・・。


でも、なれないんだ。


あたしは、「葵」だから。










そして、決心する。


「海翔。」


あたしは、もう海翔に話しかけるコトが怖くなかった。


「なに?」


「もう、諦めるからさようなら。」


「え・・・・?」


涙が溢れて止まらない。


こんな顔、きっと不細工に違いない。


どうせ、あたし不細工だからいいけど。


あたしは歩き出した。


もう、後ろは振り向かないと決めて。