"ボサボサ陰気眼鏡女の取り柄は、頭がイイこと"─

…みたいに思われてたようだけど、見た目も中身も最悪なのだと、クラス中に知れ渡ってしまった。

別に学校内で知られるくらいならかまわない。



1番恐いのは…あの御方の耳に入ってしまうことだ。








「マナ、正座」

「はい!!」


こ・わ・い…


家に帰ってすぐ…というか玄関に入った瞬間、あの御方に呼ばれた私はリビングへと直行した。

そこに待っていたのは、学校から届いた親用の成績表を片手に握り締めながら、邪悪な氣を纏い、氷のような冷たい瞳をした…お母さんだった。


年相応…なんて言葉は絶対に浮かばない程若く見える私の母親。

私なんかとは絶対に親子だなんて思われないだろう綺麗な母親。



「真っ赤ね」

「はい…見事に…」


お母さんと向かい合わせで座るその距離は1mくらいで、私の目線は机の上のグシャリと握り潰された哀れな成績表から、1mmも動かせないでいる。

もし、少しでも目が合ったりしたら、確実に殺られそうな気がするから…。



「ねぇ、マナ」

「はい!!何でしょうか!?ってかその前に謝ります、ゴメンナサイ…」


ちょっとでも、ほんの僅かでもいいから怒りを縮小させようと、とりあえず謝るという選択肢を選んでみた。

うちの母親に"これからは頑張りますから今回は見逃して下さい"なんて言い逃れは通用しない。

"これから頑張れるなら、今までだって頑張れたはずだ"と言われるのは目に見えているから。


「謝れば少しでも許されると思ってる?そんなもんはガキの喧嘩ぐらいなんだよ…それより話しを聞きな」

「すみませっ……はい、」


謝るも失敗。おとなしく説教を垂れ込まれるとしよう。


…と、観念した私を余所にお母さんは、予想にしない不可解な言葉を口にした。


「これは学校だけでは無理だと思うから…呼ぶわ」

「…はぁ?」


…呼ぶ……?


真顔で静かにそう言った母の意図は、今の追い詰められた私の頭では考えることが出来なかった。