君の瞳に映る色

思わず閉じた瞳を開けると
玲の顔が間近にあった。

口元に笑みを浮かべながら
自分を見下ろす玲は
今までとは違う。
赤みの強くなった瞳は鋭く光り
獲物を狙っているかのようだ。

何が起こっているのか
理解できない。
ただ目の前の玲に棗は背筋が
冷たくなるのを感じた。

「記憶が消せないなら
血を吸って俺のものにしてやる」

怖い、そう思うのに
身動き一つ取れない。
声も出ない。
押さえ付けられた手首に
痛いくらい力がこもる。

玲は棗の耳元に顔を寄せてきて
囁いた。

「怖い?すぐ済むよ」

玲の顔がゆっくりと
首筋へ降りていく。
棗の身体がビクリと震えた。

次の瞬間激しい音とともに
警備員がドアを蹴破り
バスルームへと突入してきた。

続いてメイドや柊も
飛び込んでくる。
タイル張りの床に転がっている
棗に駆け寄った。

警備員は不振な男が
中にいないことに気付くと
窓から逃げたと
外を調べに出て行く。

そんな様子を棗は
呆然と見送る。
身体の震えはしばらく
収まらなかった。