保健室に、なんとか言葉を紡いで
壁に手をついた棗を
瑠璃が脇から支えた。
小柄な瑠璃が棗を
抱えるようにして歩き出す。

遠くでチャイムの鳴る音がしたが
瑠璃は構わず棗を支えて歩いた。

他人がこんなにも近くにいるのは
すごく久しぶりだった。
必死に自分を支えてくれる瑠璃。
その体温がすごく
暖かく感じた。

保健室のドアには
『櫻井 外出中』と札が
下がっていた。

「先生、お留守みたいですね」

隣の瑠璃が呟くが、
棗は構わずにドアを開けて
中に入る。
ベッドがカーテンで仕切って
あるのが目に付いた。

色の気配を見なくても
誰がいるのか想像がついた。
棗はベッドに歩み寄ると
カーテンを開ける。

玲は“食事中”だった。

「おはよ、お嬢様」

棗に気付いた玲が
首元にうずめた顔を上げる。
唇の端についた血に
棗は顔をしかめた。

「西園寺さん?」

瑠璃がこちらをのぞきこむ。

「きゃ……血…血が」

瑠璃が玲の口元に付いた
血に悲鳴を上げる。

「あぁ、これは……」