「玲(レイ)クン、ほっぺ赤いよ」

女生徒がハンカチを差し出す。

「大丈夫だよ、ありがとう。
それより彼女は見ない顔だな」

切れ長の瞳が
棗が去っていった方向を
じっと見つめる。

「西園寺さんのこと?」

「知ってるー、
西園寺(サイオンジ)棗。
あの街外れの超でっかい
お屋敷の子でしょ」

1人の女生徒が言い出したのを
きっかけに、
皆が口々に言い始める。

「お嬢様だか何だか知らないけど
玲クン叩くなんてありえない!」

「ホント!学校にも
ほとんど来てなかったのに
なんで急に来たんだろう」

女生徒の話を静かに玲は
聞いていた。




「西園寺 棗、か…」