棗は振り返り右手を振り上げた。

「おっと」



玲はそれを機敏な動作でよけると
棗の手首をつかむ。


「何度も同じ手にはのらない
…ここ、少し血が出てるな」



玲の手が棗の唇の傷に触れる。

じんとした痛みが走る。



「…っ…か、かすり傷よ」


薄暗い部屋の明かりのもとでも
赤くはれているのがわかる。

玲がつかんでいる腕に
力がこもった。




「!」




そのまま体を引き寄せられる。

玲の顔が近付き
唇のすぐそば、
赤くはれたところを
舌がツゥとなぞる。


「き、きゃぁ!」