いきなり走り出した玲は
2階の教室に行くのかと思えば、
屋上に行く階段を上がりだす。
「教室はそっちじゃないわよ」
玲の背中に向かって声を掛けると
身を翻した玲に壁に身体を
押しつけられた。
「あれ?お嬢様は授業なんか
どうでもいいんじゃないの?」
「お嬢様って呼ばないで」
「………棗」
鼻先をくっつけながら、
玲が名前を呼んでくれる。
身体を寄せると漂う甘い玲の
香りが鼻腔をくすぐる。
「ここじゃダメ」
再び制服のブラウスに手を掛けた
玲を諫めるように言う。
「じゃ、屋上?」
「…もっとダメ」
「じゃ、俺んち?」
「…せっかく学校に来たのに」
呟きが玲の唇に
飲み込まれていく。
甘い感触に身を委ねながら
棗はそっと目を閉じた。



