苦笑いしながら鏡の中の
自分を見つめる。

「あ、お嬢様、私がやりますよ」

棗の姿を認めてメイドの佐久間が
慌てて声を掛けてくる。

いいのよ、と棗は梳かし終わった
櫛を置いて立ち上がった。

「自分でできることは
自分でするから」

柔らかい笑顔の棗に
佐久間は目を丸くしたまま
後ろ姿を呆然と見送る。

「お嬢様でも、あんな顔で
笑うんだぁ…」

小さい呟きは広い衣裳部屋に
溶けていった。