「なにをやってるのかしら」

菖蒲がベッドの背に凭れかかる。

膝の上の食器がカチャリと
音を立てた。

「後悔しているならおじい様に
そう伝えてあげて」

一瞬驚いた菖蒲は
すぐに目を伏せる。

「ふふ、そうだったわね。
あなたもあの人と同じだった、
油断したわ」

思わず見えた色のことを
口にしてしまったことに
棗はハッとした。

「…読まれるのが嫌だったわ。
そんなことで本心を
知られたくなかったもの」

「ごめんなさい…」

「わたしも見えていれば
何か違ったかしらね」

微かな呟きは耳を
凝らしていないと
聞き漏らすほどだった。