「言って」
甘い響きを含んだ声が
囁くように棗の言葉を誘う。
言葉にしてしまうと
もう戻れない気がした。
ずっと一緒にはいられないのに。
わかっているのに。
自分が西園寺にいる限り。
締め付けられる心が前よりも
ずっとずっと苦しい。
「……好き、よ」
言葉にしながら
自分を抱き締める玲の手に
自分の手を重ねた。
苦しいくらい強く抱き締める腕を
今は離さないで欲しいと
思ってしまう。
「俺も」
「…その言い方、ずるい」
首だけ動かして後ろの玲を睨む。
玲は楽しげに笑いを漏らした。
音を立てて頬にキスをされる。
耳に寄せた玲の唇が紡ぐ
微かな声。
――――――好きだ。



