君の瞳に映る色



もう気付いたんだ、と笑う。
玲が棗の頬を撫でる。
くすぐったさに棗は首を竦めた。

「なんでくれる気になった?」

「死にそうな顔してたもの」

「それだけ?」

「それだけって…?」

質問の意図がわからず
顔をしかめる棗の耳元に
唇を寄せた。

「俺の事が好きだから、とか」

押し退けるように棗が身を引く。
咄嗟に玲の身体を押すと、
「うっ」と玲が呻いた。

「あ、ごめんなさい…」

言いながらどんどん棗の顔が
耳まで赤く染まっていく。

逃げるようにベッドから
降りようとした棗を後ろから
玲は抱きすくめた。

「なぁ、言えよ…」

「なんでわたしが。
そ、そういうのは男性が
言うものでしょ」

「あ、お嬢様発言」

クスクス笑う玲の息が首筋に
かかって火照る身体が余計に
熱くなるのを棗は感じた。

「言うまで放さない」

言葉とともに棗を
抱きしめる力が強くなった。