堪え切れずに手の隙間から洩れる
泣き声が静かな病室に響く。
両方の掌で頬を包みながら
そっと名前を呼んだ。
「…玲…」
声とともにまた新しい涙が
溢れてくる。
不意に押されるようにして
棗はバランスを崩した。
背中に熱い腕の感触。
布団越しに玲に寄りかかった
状態で棗は顔を綻ばせた。
「寝た振りしてたの?」
少し身体を離して見上げると
いつもの笑顔を浮かべた
玲の顔があった。
「呼ぶから起きた」
優しく背中を往復する手に
棗は黙って玲を見つめていると
玲はもう片方の手で、
頬を伝う涙を拭った。
頬を撫で、髪に潜っていく手の
感触に身を委ねる。
自然に引き寄せられて
唇を重ねた。



