君の瞳に映る色



「…看取ってやれなかったんだ」

暁生の言葉が静かな車内に響く。

独り言のように呟いて
目を伏せた暁生に、
棗は掛ける言葉が
思い浮かばなかった。

母も祖父もすれ違いで
苦しんでいるのがわかるのに、
自分にはそれを
解決する術がない。

重く圧し掛かる沈黙に、
着きますよ、と柊の
柔らかい声が聞こえた。

棗が顔を上げると、
車はロータリーを周って病院の
正面玄関で停まった。

目の前に佇む病院を見上げ、
「普通の病院ね」と
思わず零すと、暁生が笑った。

「普通だよ、スタッフが組織の
人間で構成されてるだけだ」

暁生を先頭に中へ入ると、
受付の女性が恭しく頭を下げた。