君の瞳に映る色


林道を越えたところで隣町の
風景が目に映る。
車は渋滞の波に引っかかって
速度を落とした。

「その組織にいる人はわたしと
同じような力を持ってるの?」

雑踏を眺めながら棗は聞いた。

「いや、お前のは特殊だよ。
彼らは皆人間かそうでないかの
気配がわかる程度だからね」

「そう、…でも知っていたら
自分が人と違うと悩むことは
なかったわ」

そう言って目を伏せた棗の頭を
暁生はゆっくりと撫でた。

「菖蒲が、…お母さんがあまり
いい顔をしなかったんだよ。
わたしや組織にお前を取られる
気がしたんだろう」

何か言いたげな棗に暁生は
肩を竦めて見せる。

「そう思われることを
してきたのはわたしだ」

「おばあ様が死んだのは
おじい様のせいじゃないわ」

思わず語調を強めると
暁生は穏やかに笑った。