「…気づいてたの?」

小さく呟いた菖蒲に、暁生は、
ん?と聞き返す。

「わたしが会社を
潰したかった事よ」

まぁな、と暁生は苦笑いした。
そして暁生も目を伏せる。


暖かい日差しが白い廊下を
より白く反射させる。

建物の近くに植えられた木々が
さわさわと風に揺れて
音を奏でた。


いつから?と聞いた菖蒲に
暁生は首を傾げた。

「いつからだろうな」


曖昧に笑って暁生は窓の外に
視線を移した。

風に揺れる鮮やかな緑を
眺めながら、
自然と言葉が溢れてくる。

「知らないふりをしていることが
いいと思っていたが、
本当は向き合うことから逃げて
いただけかもしれないな」

溜め息にも似た笑いを零して
暁生は遠くを見遣る。

菖蒲は何も言うことが出来ずに
ただ俯いていた。