「玲!玲ー!」
叫び続けて声が枯れてきた。
それでも棗はドアを叩きながら
屋敷のどこかにいる玲を
呼び続ける。
「…呼んだ?」
一瞬、空耳かと思った。
驚いて手を止めると、
扉の向こうでガチャガチャと
音がする。
ビクともしなかった扉が
軽い音を立てて開いた。
「あ、ストップ」
思わず飛びつこうとした棗を
玲が手で制する。
「いくらあんたが痩せてても
抱きとめる力はないかも」
苦笑いする玲の身体に目を移すと
あちこちに血が滲んでいた。
苦しげに棗は顔を歪める。
「…ごめんなさい、
わたしのせいで……」
瞳を潤ませる棗を玲は
軽く抱き寄せた。



