君の瞳に映る色



後ろからは階段を一色が
上ってくる気配がする。

血液不足の身体は余計に
力が入らない。

気を抜けば櫂斗の姿が霞む。

それがわかるのか無表情のまま
櫂斗はただ自分を見つめていた。

一色の気配が迫る。

銃声が廊下に響いた瞬間、
玲は最後の力を振り絞って、
身体を瞬間移動させた。


玲の姿が消える。


櫂斗は自分に向かってきた
銃弾を素早い身のこなしで
避けた。

「当たったらどうする」

真正面の男を睨みながら
櫂斗は言う。

当たんなかっただろ、と
大したことのない様子で一色は
笑った。

「気配を追えるか?」

「それが仕事だからなぁ」

ニヤついた顔で一色は空になった
薬莢をバラバラと床に捨てる。

新しい弾を込め、上の階へ続く
階段を昇り出した一色を
櫂斗は黙って追った。