玲は浅い呼吸を繰り返す。
「棗を、返せ」
息と共に吐き出された言葉に
櫂斗は眉を寄せる。
玲を踏む足に力がこもった。
「彼女は僕のものだ」
「…残念、もう、
俺のものにしちゃった」
床に倒されながらも
首を捻って櫂斗を見上げる。
怒りに赤く染まる櫂斗の瞳が、
廊下に灯された明かりのように
妖しく揺れた。
肩に鋭い痛みが走る。
身体が宙に浮いて櫂斗に
蹴られたことが分かる。
玲はクルリと向きを変えると、
うまく着地した。
撃たれた左足がビリビリ痛む。
足を庇いながら立って
目の前の櫂斗を睨み据えた。



