一瞬自分かと思う写真に写った
姿にハッとする。
しかしそれがすぐに
自分ではないと分かって、
複雑な思いで棗は写真を眺めた。
恐らくこの女性がNH、
指輪のイニシャルを持つ女性だ。
写真は古いものなのか端が黄ばみ
角が少し擦り切れていた。
写真を元に戻そうとした時、
階下の物音に気がついた。
同時に微かに流れ込んでくる
色にも気付く。
「殺意の色と………玲…の色?」
棗は慌てて扉へ駆け寄った。
「開けて!!誰か!
ここを開けてーー!!」
無我夢中でドアを押す。
開く気配のない扉を必死に
叫びながら叩いた。