君の瞳に映る色



ぐるぐるに巻かれたネクタイから
手をようやく解放できると、
棗はよろめきながら入り口の
扉へと向かう。

取っ手を引こうとして、
開かないことに気がついた。

何かをかませているようで
少しだけ開く隙間から
棒状のものが見える。

無理やりに扉を押したり
引いたりしたが、
開く気配がなかった。

ガチャガチャと金属が
ぶつかるような音だけが響く。


諦めて棗は振り返る。

部屋にはベッドの他に本棚、
机と椅子のセット、
ソファーが置いてある。

その奥には小さい窓があった。

窓は思った通り身体が抜ける
幅では開かなかった。

出入り口は一か所しかないから、
櫂斗はそこを
塞いでいったのだろう。

感覚の戻ってきた手で机の
引き出しを片っ端から開ける。

適当に開けた引き出しの中の
写真に棗の手が止まった。