君の瞳に映る色



引っ張ると手首が余計に締まって
もう指先にほとんど感覚がない。

長時間圧迫され続けた手首は
色が変わり冷たくなっている。

棗は何とか足の力で身体を
動かすとベッドの飾りに
結び付けてある結び目まで
移動した。

しかし感覚のない指先には
力が入らず、
暴れてきつくなってしまった
結び目は解くことができない。

仕方なく棗は手首を
ありったけの力で引っ張った。

細い紐と違ってネクタイは
なかなか千切れない。

ただ光沢のある素材だからか、
結び目が段々移動しているのが
わかった。

少しずつ、少しずつ。

結ばれた先が布の中へ
消えていく。

そうして完全に先がなくなった
瞬間、棗の悲鳴とともに、
ネクタイの先端がベッドの
飾りから離れた。