君の瞳に映る色



白い首筋が呼吸に
合わせて揺れる。

ベッドの端に片膝を乗せると、
櫂斗は棗の首筋に顔を
寄せようとした。


その時、微かに階下から
物音が響いた。

広い屋敷に物音はほとんど
響かない。

思い当たる男の顔が頭を過って
櫂斗は顔をしかめた。

身体を起こすと、「先に片付ける
用事が出来たようだ」と言った。




櫂斗が出て行き、取り残された
棗は霞のかかったような意識に
頭を左右に振った。

動きの鈍る身体を必死に捩る。

今の棗には階下から聞こえてくる
物音にも気付く余裕はない。

櫂斗が戻るまでに抜け出さないと
そればかり考えていた。