時折むせる棗に歩み寄る。
気配を感じたのか棗は櫂斗の方に
不自由な動作で顔を動かした。
紅潮した頬を櫂斗の手の甲が
撫でる。
熱い感触に櫂斗は背筋が
思わず震えた。
生きている。
再び生きて自分のもとに
戻ってきた。
一人逝かせてしまったことに
どれだけ自分が悔やんだことか。
事故で死んだと言う割に
ベッドの上にいる乃愛は
ほとんど傷もなく
まるで寝ているようだった。
寝ていたのかもしれない。
いたずら好きだった彼女は
僕を驚かせようと
していたのかもしれない。
君が戻れば、僕の血を分けよう。
二度とケガをしないように。
ずっと一緒にいれるように。



