荒い息で胸を上下させながら、
棗は櫂斗の名前を必死に呼ぶ。
「櫂斗さん、……櫂斗さんっ…」
自分の身体に起きている違和感に
恐怖を覚える。
足をバタつかせ、もがきながら
拘束されている腕を必死に
引っ張ってみる。
その度に括りつけられたベッドの
飾りが鈍い軋んだ音を立てた。
櫂斗はベッドから少し
離れた場所にある本棚に
もたれていた。
薄暗い部屋で俯いた顔からは
表情は全く読めない。
無理に手を引くと布が擦れて
手首に痛みが走る。
ただそれが気にならないくらいに
棗は混乱していた。
身体中が熱い。



