君の瞳に映る色



「………………え?」



聞き返す声が震える。

櫂斗の言葉を頭の中で
反芻しながら棗は眩暈を覚えた。

青ざめる棗をよそに櫂斗は
自分の腕時計に目を落とした。

「30分くらいで効いてくる、
その状態で血を吸えば君は
ヴァンパイアになれる」

櫂斗の声がどこか遠くに
聞こえる気がした。

心臓が激しい音を立てている。

櫂斗はいったん棗の上から
降りると、ベッドの隅に
腰掛けた。


「弱い人間はもうこりごりだ…」


溜め息とともに吐き出した呟きは
薄暗い部屋に
静かに溶けていった。