君の瞳に映る色


櫂斗は棗の顎を持ち上げると
さらに深く求めてきた。

鼻で苦しげに息を継ぎながら、
櫂斗が早く離れる事を
ただひたすら祈った。

「…上出来だよ」

ようやく唇を離した櫂斗が
囁くように耳元で言う。

胸ポケットから小さな
プラスチックのケースを
取り出すと、掌に傾けた。

白い錠剤を2個手にすると、
櫂斗はそれを口に含んで棗に
再び口付けた。

口の中に入ってきたものに、
棗は目を丸くする。

苦い味が口の中に広がる。


ゴクンと喉が鳴った。


「な、何を飲ませたの?!」

怯える棗に櫂斗は口の端を
吊り上げて笑った。


「君がヴァンパイアになる為の
特殊な薬だよ」