ひんやりしたベッドの感触が
棗の感覚を蘇らせていく。
指先が僅かに
動くようになったことに
棗は気づいた。
足元のマットが沈む。
スプリングの軋む音に
鈍い動きで棗は身体を起こした。
「やはり暗示が効きにくい
ようだな」
自分から遠ざかろうとする棗の
足首を櫂斗は掴み、引き寄せる。
足をバタつかせながら
棗は抵抗する為に
無我夢中でシーツを掴んだ。
「抵抗されるのも楽しいが、
そろそろ従順な君も見てみたい」
そう言うと櫂斗は棗の両手首を
掴んで片手で束ねる。
自分の首からネクタイを抜くと
棗の手首をきつく縛った。
余った先端をベッドの飾りに
引っ掛けて引くと、
棗の両腕が持ち上げられる。
「さっき、女を助けた礼を
もらおうか」
言われて棗は唇を噛み締める。
目を伏せながら
身体の力を抜いた。
「いい子だ…」
櫂斗の唇がゆっくりと自分の
それに合わさる。
覚悟はしていても身体がビクリと
跳ねた。



