棗は目を伏せて深呼吸する。 その言葉を口にするのには 覚悟が必要だった。 もう2度と今日までの生活には 戻れない。 爪が食い込むほどに拳を握る。 「…あなたの言う通りにします」 櫂斗は満足そうな笑顔を 浮かべると一色の方へ向き直る。 「放してやれ」 今度は一色が不満を訴えた。 「はぁ?この女は依頼とは 関係ないだろ」 「命令が聞けないなら あの話はナシだ」 櫂斗の言葉に突き飛ばすように 一色は絢を開放する。 突然支えを失った身体は よろめいて、 絢は床に崩れ落ちた。