深く息を吸って怒りを沈めると、
冷蔵庫の傍にしゃがみこんでいる
玲に歩み寄った。

「…どうしたのよ」

ふと、紙パックを握る玲の
手が震えていることに気づいて、
ピンと来た絢は苦笑いした。


「血液不足の禁断症状ね」


絢の言葉に黙っていた玲が
ようやく口を開く。

「棗の血を吸うとこだった」

「それで慌てて帰ってきたの」

うなだれる玲の頭を
絢はそっと撫でた。

「大丈夫?だからむやみに
吸うなって父さんから
言われてたのに。
過剰な血液摂取はそうやって
自制がきかなくなるんだから」

玲は絢の言葉を
黙って聞いていた。

「玲ちゃんどうしたの?」

玲と絢を覗き込むように2人の
娘たちが机の陰から見ている。

「大丈夫よ。玲、とりあえず
立ちなさい。ソファーに座って」