ジャガイモの皮をむきながら、
昼間感じた嫌な気配について
棗は考えていた。
殺意…。
今まで見たこともないような
悪意に満ちた色。
人の隙間に見えた気がした
男性らしき影は
棗から離れた位置にいた。
なのに、あんなにはっきり
見えるなんて…、棗は背筋に
冷たいものが走るのを感じる。
自分を探している者でも
櫂斗でもない。
なのにスーパーから遠く離れた
ショッピングセンターで
気配を感じたのはなぜだろう。
まとまらない考えに
棗は小さく頭を振った。
「…………痛っ!」
手を滑らせてはずみに包丁が、
ジャガイモを握った
左手の親指に深く刺さる。
指先にあっという間に
鮮血が滲んだ。



