玲の顔が近づいてくる気配がして
咄嗟に棗は身体を引く。
バスの中は人が少なかったものの
ここは沢山の人が行き交う
ショッピングセンターだ。
両手で玲の胸を押すと
その手首を掴まれた。
「…なに考えてるの?」
引きつった笑いを浮かべて
睨むと、
棗が予想してる事だと思うよ、と
笑って答える。
「人が見てるわよ」
「そうだな」
まったく取り合う様子のない
玲に棗はさらに顔をしかめた。
「俺だけ見てればいいよ」
勝手なことを言いながら、
近付いてくる玲の顔を
見ていられず棗は視線を逸らす。
周りが気になる。
沢山人がいるのに。
思わず周りの色に意識が
集中した時だった。
触れるか触れないかのところで、
棗はハッとしたように遠くへ
目をやった。



