手を取って自分の頬に寄せる。 「大きな手…」 玲の方へ視線を向けると、 頬にある手に力が籠もった。 素早く玲の顔が近付く。 目を閉じる隙さえない早さで。 玲の唇が棗のそれに重なって またすぐに離れる。 「…降りるぞ」 玲が立ち上がって棗は 我に返った。 人こそ疎らだがバスの後方の席に 今、自分がいることを思い出して 変な汗が出る。 恥ずかしさで顔を 上げられないまま急いで玲に 続いてバスを降りた。