「離れられなくなりそう」
棗は身体を擦り寄せる。
玲の肩口に顔を埋めると
甘い香りがした。
仄かな香りですら棗を幸せな
気分にさせる。
愛おしいと感じる。
「離れられなくしてやるよ」
身体を少し起こした玲が棗を
見下ろす。
紅茶色の瞳が近づいてくるのを
見つめながら唇を重ねた。
玲が自分を傍に置く理由は
もうどうでもよく感じた。
特別でなくても、弱点を
知ってしまったからだとしても、
それでも構わない。
ただ、この温もりを今は
感じていたい。
その気持ちだけが
頭を支配していく。
次第に激しくなるキスに棗は
遠慮がちに舌を絡めて応えた。



