ようやく唇が離れて、
息苦しさに棗は深く息を吸った。
息が上がって激しく胸が
上下する。
唇は離れたのに、玲の顔は
鼻先が触れるか触れないか位の
距離に、まだあった。
玲の瞳に自分が映っている。
きっと自分の瞳にも
玲が映っている。
何を考えているのか、
相変わらずわかりにくい闇の色が
棗を不安にさせる。
触れている理由を知りたいのに、
肝心な時に色がわからない。
なんて役に立たない
能力だろうと思う。
息苦しさだけではない何かが
胸を締め付ける。
「棗…」
名前を呼びながら玲は
色んな所に、キスの雨を降らす。
額、瞼、頬、耳……
キスを受けるたびに身体が
熱を帯びていく。
耳たぶを甘く噛まれて
棗の身体が大きく跳ねた。
「あっ………れ…い」
思わず零れた名前に玲は
満足そうに笑った。
「もっと、呼んで」
耳から首筋へと唇を
移動させながら囁く。



