君の瞳に映る色


玲が顔を離した隙に、
棗は顔を背けた。

「ダメっ」

玲の胸を押す手が小刻みに
震える。

「…俺も、ダメ、限界」

玲は横を向いて露になった
棗の首筋に唇を這わせた。
ビクンと跳ねる棗の身体を手で
軽く押さえる。

耳の傍から喉元を通って鎖骨へと
降りていく唇に棗は首を振った。

「ヤダ、嫌、…ねぇ、イヤ」

言葉とは逆に身体に力が
入らなくなる。
何かを掴みたい手が空中を
彷徨った。

熱い玲の手がその手を包み込む。
絡めた指をぎゅっと強く握った。

「棗」

息が止まりそうなくらい
胸が締め付けられるのを
棗は感じた。

目を開けると
自分を見下ろしている
玲の視線と出会う。

先ほどまでの熱に浮かされた
目ではなく真剣な目だった。

思わず息を呑む。


「俺のものになれよ」


鼻の奥がツンとして棗は眉間に
しわを寄せた。

「だからっ
その他大勢の女は、嫌なの」