君の瞳に映る色


目の前に、玲の顔があった。

棗の身体の横に両手を付き、
のしかかるようにして玲はどこか
ぼんやりと棗を見ている。

熱のせいか頬が少し赤い。

「お嬢様がほしい」

うわごとのように繰り返しながら
玲の顔が降りてくる。

「…んんっ」

熱い唇、吐息に溶かされそうな
気分になる。

拘束されているわけではないのに
身体が、動かない。

弱々しく押し戻すように
手で胸を押して、その時初めて
玲の格好が昨日の夜のままの
上半身裸だということに
気が付いた。

直接触れた肌の感触に心臓が
倍の速さで鼓動を刻みだす。

まだ自分の唇を塞いだままの
玲の胸を今度は強く押した。